長寿遺伝子を活性化するにはどうしたらよいか

アメリカにはカロリー制限協会という団体があり、サーチュイン遺伝子が発見される前に、カロリー制限が寿命を延ばすらしいという話をもとに早くからカロリー制限を行い、健康に長寿を全うしようと取り組んできました。
会員は5000人ほどで、皆30%程のカロリー制限を行っています。
70代の会員の血管年齢は40歳代で、実年齢よりも30年も若いという結果でした。
また動脈硬化の度合いも実年齢よりもかなり若い状態が保たれていました。
免疫細胞は本来体の外から侵入してきた病原菌にたいして攻撃をしますが、老化と共に病原菌と自分の体の区別がつかなくなり自分の体を攻撃し始めます。
特に血管は攻撃を受けやすく、攻撃を受けると血管は厚みが増していき、硬化していき弾力がなくなっていきます。
弾力がなくなることにより、血管壁はもろくなり強度が落ちていきます。
しかし、カロリー制限を行うとサーチュイン遺伝子が活性化し免疫細胞をおとなしくして暴走をとめます
また、通常血管内壁からは免疫細胞を引き付ける物質が放出されていますが、その物質の放出も抑えられます。
この二つの効果により動脈硬化が抑えられるのです。
金沢医科大学の研究で4人の被験者に7週間25%のカロリー制限をおこなったところ、サーチュイン遺伝子が活性化すると出る酵素が通常の6倍から10倍出ることが分かりました。
この研究でひとに対してのカロリー制限もサーチュイン遺伝子を活性化するということが分かりました。
しかし、安易なカロリー制限は避けるべきだといわれています。
カロリー制限の程度は人それぞれ違うので無理な食事制限は無理な負担をかけるため、サーチュイン遺伝子を活性化する前に体を痛めてしまう可能性があるのです。
またサーチュイン遺伝子を活性化し続けるにはカロリー制限を続けなけばなりませんので、一度でも満腹になってしまうと、サーチュイン遺伝子も不活性になってしまい、長寿の効果は消えてしまいます。そういったことから、カロリー制限に頼らない方法でサチュイン遺伝子を活性化する方法の模索が始まっています。

長寿の薬を作ることはできるか

楽にサーチュイン遺伝子を活性化する方法がないか、アメリカでは早くから大学や企業が多額の研究費を投

 

入して研究しています。
2003年にはハーバード大学の研究チームが、ブドウの皮・種子に含まれる「レスベラトロール」という物質がサーチュイン遺伝子を活性化するという論文を発表しました。
レスベラトロールはポリフェノール(抗酸化物質)の一種で、赤ワインに含まれており、フランス人は動物性脂肪の摂取が他国の平均よりも多いにもかかわらず、心臓病の発症率が低いという矛盾「フレンチパラドックス」を解く鍵ではないかと言われています。
2006年にはハーバード大学のデビッド・シンクレア博士はこのレスベラトロールを使い、肥満マウスの死亡率が約3割減少するという報告をしました。
またスイスでもレスベラトロールを与えたマウスと与えなかったマウスでは、与えた方ではスタミナが2倍になりました。
ただし、ワインでサーチュイン遺伝子を活性化するのは無理なようで、ワイン一杯当たりのレスベラトロールの量は肥満マウスに与えられた量の0.3%にすぎません。
また、ワインは産地や品種によってレスベラトロールの含有量が10倍ぐらい違うために単純にワインを飲めばいいというわけだはありません。
成人男性の場合、ワインでレスベラトロールを摂ろうとしたら1日当たりボトル100本飲まなくてはなりません。
アメリカではFDA(アメリカ食品医薬品局)がPHACE4の臨床試験に入り、食事制限をしなくても適切な量のレスベラトロール摂取で、血管の柔らかさや記憶力が向上したという報告をしています。
なぜ、レスベラトロールがサーチュイン遺伝子を活性化させるかはまだ議論が続いていますが、
有力だとされているのは、通常サーチュインは一度働くとそれ以上は働かなくなりますが、レスベラトロールはサーチュイン遺伝子に働きかけ、何度も働かせることができるのではないかと考えられています。
そのおかげで継続的なカロリー制限をしなくても寿命を延ばしミトコンドリアを元気にすることができるのです。
アメリカではレスベラトロールを含んだサプリメントが徐々に発売され始め、年間30億円を売り上げるまでになってます。
ところがアメリカではこうしたサプリメントが出るに従い、正しい食生活を放棄して好きなものを好きなだけ食べることにしてしまった人たちも出てきています。
これでは本末転倒です。
サーチュイン遺伝子はまだわかっていないことが多く、人間で寿命が延びるのかというと実際に何十年も経ってみないとわからないというのが現状です。

人間の最高齢は122歳ですが、それに近いもしくはそれを超えられるかは今の時点では断言できません。
ただ、サーチュイン遺伝子は病気に対する予防効果が期待できるので、寿命を迎えるまで健康に過ごせる可能性はぐっと高まります。

日本での研究

東京大学の大内尉義博士は老年病(心筋梗塞・脳梗塞・がん等老化によって引き起こされる病気)の治療に結びつく可能性を指摘しています。
大内博士はレスベラトロールが血管の老化を防ぐ働きをするのではないかと注目しています。血管には血管内皮細胞と呼ばれる細胞がありますが、博士はこの細胞を培養しレスベラトロールを与えてみたところ、老化が抑制され動脈硬化を抑制する働きが2倍になりました。
また博士の研究の結果、様々な病気を患っている高齢者に対してひとつひとつ対応するのではなく、レスベラトロールを使用して一元的に治療できる可能性も出てきました。
札幌医科大の堀尾博士の研究では、皮膚がんの一種メラノーマに対するレスベラトロールの効果を研究しています。
メラノーマは比較的治りやすいといものの転移しやすいという特徴がありますが、レスベラトロールを与えた場合転移が起きやすいという報告をしています。
なぜレスベラトロールが転移を促すかはまだ原因がはっきりとしていませんが、こういった例を今後も研究していく必要はあると思われます。
もともとサーチュイン遺伝子は私たちの先祖が飢餓を生き抜くために獲得したものですが、それ以前に人類は医療の発達などで400年位前まで平均年齢40歳であったものを80歳代まで引き上げました。
もしかすると長寿という事に関しては限界まで達してしまったかもしれません。
そしてここにきて新たな長寿の可能性が出てきたわけですが、果たして更なる長寿は可能なのでしょうか。
新しく出てきたサーチュイン遺伝子による長寿の可能性を現実のものにできるのでしょうか。
私たちには生と死について更なる変化が必要なのではないかと考えられます。


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