長寿と食事制限の関係

935年にある論文が発表されました。
ラットの食事と寿命に関する論文で、そのなかで興味深いことに好きなだけ食べたラットよりも、食事制限したラットの方が寿命が延びたというものでした。
その後もラットにとどまらず、カルフォルニア大学サンフランシスコ校の分子生物学者シンシア・ケニヨン博士からCエレガンスと呼ばれる線虫での実験でも同じような報告があるなど、同様の報告が世界中から届きました。
報告が増えるもののカロリー制限と長寿の関係に一向に因果関係は分かりませんでした。
2004年ハーバード大学のデビッド・シンクレア博士の研究チームが、因果関係を解明しました。
シンクレア博士はカロリー制限したラットとしなかったラットでサーチュイン遺伝子の活性具合を調べました。
カロリー制限した方のラットのサーチュイン遺伝子はしなかったほうのラットに比べて明らかに活性率が高かったのです。
これらの研究によって
「カロリー制限→サーチュイン遺伝子活性化→長寿」
ということが分かってきました。
人間のような寿命が80年ある生物での実験は長期間にわたるためリスクを伴いますが、ウィスコンシン大学の研究チームはヒトと同じ霊長類であるアカゲザルで実験を行いました。
アカゲザルの寿命は20〜30年ですから心棒強い実験が必要でした。
チームは一卵生双生児のアカゲザル35組を使い一方には餌を好きなだけ食べさせ、もう一方には30%減らした餌を与え続けました。
20年後カロリー制限しなかったグループは半数が死んでしまいましたが、カロリー制限したサルのグループは8割が生きていました。
また、生きていただけでなくガンや動脈硬化、糖尿病などの老化に関わる病気にも罹りにくくなっていました。
見た目でもカロリー制限した方が若々しく保てていました。

研究チームは脳の状態も調べましたが、カロリー制限しなかったサルは神経細胞が老化して死に、萎縮も進んでいました。一方カロリー制限した方は、神経細胞の減少も抑えられ、萎縮もほとんどありませんでした。
結論としては、カギは活性酸素にあると考え、老化を引き起こす原因になる活性酸素がミトコンドリアから発せられますが、カロリー制限がによりサーチュイン遺伝子がミトコンドリアを活性化させ、活性酸素の発生を押さえ、細胞を若々しく抑えるということになりました。

長寿遺伝子はなぜ生まれたか

どうして、あらゆる生物がサーチュイン遺伝子を持ち、カロリー制限をすることで活性化するのかということについて、2000年にサーチュイン遺伝子発見に貢献した今井眞一郎博士は
「生物が食料の少ない時代を生き残るために必要だったから」
と述べています。
博士は、サーチュイン遺伝子が進化の過程で残ってきた要因として、飢餓があったと思われるとして、苛酷な環境を生き延びることが出来るように、ミトコンドリアを活性化させるなど生存する確率を上げるためにあらゆることをすると考えています。
また博士は、進化の過程で突然変異としてサーチュイン遺伝子が発生し、生物が複雑になるにつれてミトコンドリアの出す活性酸素の増加に合わせて進化し他のではないか、また、細胞の中の活性酸素を掃除するだけの存在だったものが、いつのまにか170を超える病気を抑えることの出来る能力を身に着けたのではないかとも述べています。
栄養が少ないにもかかわらず無理して子孫を残そうとすると無理がたたって死んでしまうかもしれません、よって栄養状態が悪い時はサーチュイン遺伝子を活性化させてとりあえず生き延びて
栄養状況がよくなってからというように子孫を残すチャンスを増やす目的があるとも考えられています。
長寿という言葉をきくと私達は単純に寿命が延びることだけを頭に浮かべますが、実際は少しでも子孫を残すために考えられた戦略だったのです。
カローリー制限がサーチュイン遺伝子を活性化させ寿命を延ばすのなら、現在は飽食の時代と言われ、サーチュイン遺伝子が活性しにくい時代ともいえるのではないでしょうか。


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